競泳の見どころ

五輪経験者と若手が入り交じった
新星トビウオジャパンのスタート

 リオデジャネイロ五輪で金を含む、合計7個のメダルを獲得したトビウオジャパン。4年前のロンドン五輪では成しえなかった『センターポールに日の丸を』のスローガンを達成し、勢いそのままに2020年東京五輪に向けて、新たにスタートを切る。その第一戦目となる、アジア選手権が10月17日(水)から、いよいよ開幕する。日本での開催は、1992年の広島大会以来となる2回目。2020年の東京五輪を見据え、競泳ではアジア各国から合計400人を超える選手がエントリー。白熱したレースが期待できる。
 日本代表である“トビウオジャパン”は、男子19人、女子20人の合計39人の第選手団で大会に臨む。注目は、リオデジャネイロ五輪メダリストである個人メドレーの瀬戸大也やバタフライの坂井聖人、200m平泳ぎでオリンピックレコードをマークした渡辺一平だ。特に瀬戸は、五輪終了直後から「4年後を見据えて」と、オフを返上。世界各国で行われるワールドカップに参戦。1日に数レースをこなすハードな日程を乗り切り「かなりタフになれた。成長している」と手応えを感じている。今回のアジア選手権も、バタフライと個人メドレーを含めた多種目にエントリー。連日レースに出場し続けるスケジュールをどのようにこなし、どのような記録で泳ぐのかに注目しよう。
 メダルには届かなかったが、100mバタフライで予選、準決勝、決勝と3レース続けて日本記録を更新した池江璃花子の泳ぎからも目が離せない。五輪から帰国したあとも、インターハイ、国体とレベルの高い記録で優勝。さらに、10月のワールドカップ東京大会では短水路ながら100m個人メドレーで日本新記録を樹立。得意とする自由形とバタフライのみならず、ほかの種目を合わせても高いレベルの泳ぎができることを証明した。「毎試合で自己ベストが出せないと納得できない」という向上心の固まりの池江は、今大会でもハイレベルな記録を出してくれることだろう。
 五輪選手ばかりに注目が集まりやすいが、惜しくも五輪を逃しながらも、今年の夏に活躍した選手たちからも目が離せない。
 男子では、突如表れた自由形のスプリンター中尾俊一、全日本学生選手権の100mバタフライで日本歴代2位の記録を叩き出した川本武史が、国際大会という舞台でどういう記録を出すかに注目したい。
 女子は、中学生ながら高いスプリント能力を見せる自由形の大内紗雪、背泳ぎの白井璃緒、バタフライの奈良梨花といった若手の中高生選手たちが元気だ。さらに大学生も負けていない。平泳ぎの青木玲緒樹は、全日本学生選手権の200mで、五輪の決勝に進めるほどの記録をマーク。個人メドレーの大橋悠依は、同大会で五輪代表の寺村美穂を破る活躍を見せた選手だ。
 五輪に出場した選手だけではなく、それに続く選手が続々と誕生し続けている。そんな新星の選手たちのデビュー戦となるのが、このアジア選手権なのである。
『ここから、東京五輪への道が始まる』
 そう言っても過言ではない。“新星トビウオジャパン”が、アジア最高峰の水泳大会でどのようなスタートを切るのか。行われるレースひとつ一つが、まさに見逃せないレースになることだろう。

飛込の見どころ

アジアを制するものは世界を制す
世界レベルの技を堪能せよ

 リオデジャネイロ五輪で行われた飛込競技は、全部で8種目。そのうち、中国が制した種目はなんと7種目にも及ぶ。さらに、マレーシアは女子10mシンクロナイズドダイビングで銀メダルを獲得し、入賞も多数。まさに、アジアが世界を席巻していると言っても過言ではない。
 世界レベルにあるアジアのナンバーワンを決めるアジア選手権に、日本代表“翼ジャパン”は、男子7人、女子5人の合計12人の選手団で挑む。
 注目は、リオデジャネイロ五輪で8位入賞を果たした板橋美波だ。世界で板橋しか成功していない、109C(前宙返り4回転半抱え型)という大技を持ってはいるが、五輪本番ではその成功率の低さから使用を回避。それでも、世界8位に食い込んだのは、実力が底上げされている証拠だ。また、五輪後に行われた日本選手権で「新技に挑戦する」ということも明言している。飛込という競技の特性上、練習してすぐに大会で使用する、ということは難しい。たった一度のミスが、総合得点において致命的になることが多いからだ。とはいえ、五輪を経験したことで「精神的に成長してくれた」と、板橋を指導する馬淵崇英コーチが話すとおり、落ち着いたミスのない演技をすることができるのかに注目したい。
 また、男子の坂井丞も、五輪を経験したことで成長した選手のひとりだ。五輪後に行われた国体、日本選手権の2大会続けて、大先輩でもある寺内健との接戦を制する勝負強さを見せている。少しのミスも許されない状況で、自分の演技を決めきるためには、高い集中力が要求される。勝負どころでミスが目立った坂井だったが、五輪後はむしろ勝負どころで高得点をマークしている。その勝負強さを、国際大会でも見せてくれることだろう。
 五輪代表選手ばかりではなく、女子は中学1年生の金戸凜の演技にも注目しよう。日本選手権では、女子3m飛板飛込で板橋に次ぐ2位に入り、急成長を見せる選手だ。小柄で細身な身体を生かし、入水時に水しぶきを上げないキレイな入水(ノースプラッシュ)を見せる演技が特徴だ。物怖じせず、自分の持てる力をすべて出し切り、次につながる演技をぜひとも見せてほしいところだ。
 回転し、捻り、入水をキレイに決めきる。これだけのことをたった1秒前後の間に行う飛込競技。難しさも、美しさも、面白さもそのたった一瞬に詰まっている。その瞬間にすべてを懸け、輝きを放つ選手たち。世界最高峰クラスにあるアジアの飛込競技は、終始見逃すことができない。

水球の見どころ

アジアナンバーワンを決める今大会
世界水泳選手権の出場権を懸けた熱戦に期待

 水球は、競泳、飛込、シンクロナイズドスイミングよりも早く、14日(月曜日)から東京体育館で開幕を迎える。男子は9カ国、女子は8カ国が参戦。アジアナンバーワンを決めることになる今大会は、2017年にハンガリー・ブダペスト世界水泳選手権の出場権もかかる今大会は、見逃せないカードが連日続く。スピード感溢れ、ボディコンタクトもある激しい、水泳競技のなかでは異色とも言える水球は、ゲーム性の高い観ていて面白い競技でもある。水中という特殊な環境下で行われるボールゲームだからこその面白さを、ぜひ体感してもらいたい。
 32年ぶりとなる五輪に出場し、昨年から今年にかけて、大きく飛躍を果たした男子は、日本独自の『パスラインディフェンス』というシステムから繰り出される、カウンターアタックに注目してほしい。パスラインディフェンスは、ほぼオールコートでマンツーマンディフェンスを行い、ボールを奪ったと同時にカウンターアタックをかける、日本独自の攻撃的な戦略だ。男子日本代表の“ポセイドンジャパン”を指揮する大本洋嗣ヘッドコーチは『超攻撃型』の戦略を柱に、このパスラインディフェンスというシステムを組み上げた。ディフェンス、という名前が付いているが、カウンターアタックを行うためのディフェンスであり、あくまで攻撃のためのシステムである。世界の強豪国は2m級の大型選手たちを擁するヨーロッパ諸国。高さで劣る日本が、どうすればそんな大型選手たちと渡り合うことができるのかを考え抜いた末に導き出した答えだった。
 長くアジアでも遅れをとっていた日本だが、このパスラインディフェンスが機能していくにつれて、アジアの強豪であるカザフスタンや中国を破るまでに成長した。だが、リオデジャネイロ五輪本番では、予選リーグで行われる5戦すべてで敗北。世界との壁を痛感することとなってしまった。
 しかし、パスラインディフェンスは、試合を重ねるごとに進化を続けてきた。つまり、五輪という大きな舞台を経験したことで、確実にパスラインディフェンスは進化を遂げていることだろう。五輪後に引退した選手もいるが、司令塔であるゴールキーパーの棚村克行や攻撃の要である志水祐介を筆頭に、若きシューターの足立聖弥や荒井陸は健在。そこに5人の新メンバーを加え、東京五輪に向かって最高のスタートを切るためにも、世界を経験した強さを見せつけたいところ。
 一方、五輪出場を逃した女子は、リオデジャネイロ五輪最終予選からメンバーを大幅に一新し、4年後の東京五輪を見据えたチーム編成となった。女子も世界に羽ばたくためには、リオデジャネイロ五輪で7位入賞を果たした、現アジア王者の中国と対等に戦えるまで力をつけることが絶対条件だ。新チームになって、はじめての国際大会となる女子が、アジアの強豪相手に、どのような試合展開を見せるのかに注目したい。

シンクロの見どころ

新チームで臨むアジア選手権
武器である『同調性』を生かせるか

 強い日本のシンクロナイズドスイミングが帰ってきた。過去、五輪や世界水泳選手権という大舞台で、常にメダルを獲得し続けてきたのが、シンクロだった。しかし2008年の北京五輪を最後に、世界からのメダルに遠ざかってしまう。一度順位が入れ替わると、逆転が容易ではなくなってしまうのが、採点競技でもある。しばらく日本は、世界から置いて行かれてしまうこととなる。
 だが、2015年のロシア・カザン世界水泳選手権で井村雅代ヘッドコーチのもと、猛特訓を積み重ねたシンクロ日本代表“マーメイドジャパン”は、世界でのメダルを奪還。勢いそのままに、リオデジャネイロ五輪でもデュエットとチームの両種目で銅メダルを獲得。世界に『日本の復権』をアピールした。
 五輪後、“マーメイドジャパン”のキャプテンである乾友紀子とペアを組んでいた、三井梨紗子が引退を表明。デュエットも含め、チームでも新たな選手を選考し、まさに新チームとしてこのアジア選手権に臨む。
 アジア選手権は、ソロ、デュエット、チームのそれぞれにおいて、技の正確性が求められるテクニカルルーティン(規定演技を盛り込む必要のある種目)と、芸術性が重視されるフリールーティン(自由に演技構成できる種目)が行われる。それに加え、ショーに誓いエンターテイメント性の高いフリーコンビネーション(ソロやデュエット、トリオなどのパートを組み込んで自由に演技できる)と、ハイライトルーティンという種目が行われる。
 このハイライトルーティンは、チームで3つの規定要素を組み込んだ演技を行う。ひとつは、少なくても4つのアクロバティック要素を組み込むこと。ふたつ目は、ひとつのコネクティッド(つながる演技)、またはインタートゥワインド(絡み合う演技)アクションを入れ込むこと。そして、ひとつのカレイドスコープ(万華鏡のように絶えず変化する)効果の演技を行うことだ。つまり、通常のチームやフリーコンビネーションの演技よりも、さらにアクロバティックでダイナミックさや、大人数だからこそ魅せることができる美しさを追求した演技を行うのが、ハイライトルーティンなのだ。
 ただ、どんな種目であろうとも、“マーメイドジャパン”の特徴であり、最大の武器でもある『同調性』を生かすことができれば、日本のシンクロナイズドスイミングが世界で通用することは、すでにカザン世界水泳選手権とリオデジャネイロ五輪で証明した。
 新チームとなっても、その『同調性』という武器を生かすことができるかどうか。アジア選手権で、“新マーメイドジャパン”の新しい演技のひとつ一つに注目だ。

アジア水泳選手権とは?

水泳のアジアNo.1決定戦!

アジア水泳選手権は、アジア地域において約4年に1度開催される水泳の国際大会です。
近年、アジア諸国・地域の選手がオリンピックを含めた国際大会で好成績を収めており、アジアのトップが多数出場する本選手権での優勝は東京オリンピックでの活躍を占う重要な大会となります。

第10回記念大会は日本・東京開催

日本での開催は1992年第4回広島大会以来、2回目の開催となります。2020年の東京オリンピックを控え、第10回の記念大会はオリンピックの前哨戦として「東京」での開催となります。アジア各国から続々とエントリーが届いており、参加選手団は1000人近く、歴代最大規模となり、記念大会に相応しい選手権となります。

競泳、飛込、シンクロ、水球を実施

アジア選手権は水泳の総合国際大会であり、競技は競泳、飛込、シンクロ、水球の4競技を行います。東京辰巳国際水泳場では、競技、飛込、シンクロの3競技を実施、1会場に3競技のトップアスリートが集結します。水球は東京体育館屋内プールでの開催、来年の世界水泳ブダペストのクォリフィケーショントーナメントとなり、上位入賞チームは世界水泳の出場権が与えられます。どうぞご期待ください。

沿革

アジア水泳選手権

  開催年 開催都市
第1回 1980年 バングラディッシュ ダッカ
第2回 1984年 大韓民国 ソウル
第3回 1988年 中華人民共和国 広州
第4回 1992年 日本 広島
第5回 1996年 タイ バンコク
第6回 2000年 大韓民国 釜山
第7回 2006年 シンガポール
第8回 2009年 中華人民共和国 仏山
第9回 2012年 UAE ドバイ
第10回 2016年 日本 東京

The 10th Asian Swimming Championships 2016 TOKYO

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